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ハンバート ハンバート、歌うは暖かな闇

「ハンバート ハンバート」というデュオを知って4年ほどになる。
RSRの参加アーティストの予習中に出会った「大宴会」のPVに魅入ってしてしまった。

佐野遊穂の澄んだ歌声と、佐藤良成の一心不乱にバイオリンを弾く姿。そして淡々とした歌詞。

大宴会 - ハンバート ハンバート

ハンバート ハンバートは、2005年に発表した「おなじ話」が「泣ける歌」としてよく知られている。
この歌も含め、全楽曲の半分以上が「別れ」「挫折」、そして「死」を扱った曲である。

しかしその「死」は、柴咲コウの「かたちあるもの」のような情熱的なものではなく、息をするような日常の風景として描かれる。
死を受け容れる者、受け容れられない者、そして死者自身。

おなじ話 / ハンバートハンバート

個人的には「おなじ話」よりも、前日譚のような「君と暮らせば」の方が好きだったりする。

君と暮らせば  ハンバート ハンバート - 歌詞タイム

恋人がもう死んでいることを知りながら、自分にしか見えない恋人と変わりない日常を送る「僕」。
雑音が混じる伴奏と、佐藤良成のスーダラな歌声。

ブラック・ジャック」のエピソード「ネコと庄造と」を思わせるその描写は、ほんの少し滑稽で悲しい。

【056】ネコと庄造と | 手塚治虫「ブラック・ジャック」40周年アニバーサリー! | 秋田書店

ハンバート ハンバートは、2000年代に作ったとは思えないような古臭い曲や、往年のフォークソングのカバーも多い。

「おかえりなさい」は、佐藤良成の低く優しい歌声に酔う、昭和の女唄。
「白夜」は、佐野遊穂が別れた男への恨みと赦しを歌い上げる、和製ブルース。

鬼束ちひろの初期の楽曲が持つ「闇」はピリピリと張り詰めている。だから本能的に抜け出すことができる。

ハンバート ハンバートの「闇」は、包み込むように暖かい。
今夜もふたりの歌声に包まれながら、夜が更けてゆく。

11のみじかい話