レオ・レオニの「フレデリック」は、ねずみ界のニコ生主である
自宅の居間に「フレデリック」のポスターを飾っている。
レオ・レオニが生み出した、変わり者のねずみ。
- 作者: レオ・レオニ,谷川俊太郎
- 出版社/メーカー: 好学社
- 発売日: 1969/04/01
- メディア: 大型本
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レオ・レオニとの最初の出会いは、ほとんどの人が小学二年生の教科書の「アレクサンダとぜんまいねずみ」か、本屋の絵本コーナーの定番「スイミー」だろう。
アレクサンダとぜんまいねずみ―ともだちをみつけたねずみのはなし
- 作者: レオ・レオニ,谷川俊太郎
- 出版社/メーカー: 好学社
- 発売日: 1975/04/01
- メディア: 大型本
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齢8歳の無垢な子どもたちが、美しい色彩とかわいいねずみに心惹かれ、同じような装丁の「フレデリック」をほしがる。
が、こいつはとんでもない地雷図書である。
内容の解釈が大人でも困難で、賛否が大きく分かれる作品なのである。
フレデリックは、働かない。
冬ごもりに備えて、仲間のねずみたちが夏秋と食糧集めに勤しむ中、こいつは徹底して働かない。
ただ虚空を見上げ「季節を集めているんだ」と言うばかり。
その意味は冬ごもりの終盤で明らかになる。食糧が少なくなり、荒んだ仲間たちの心に、フレデリックは集めていた「春」を再現してみせるのだった。
物語はそこで終わっている。
小学生には二種類いる。
素直で阿呆で「子どもらしい」子と、聞きたがり屋で賢くて「大人びた」子である。
後者の子と、フレデリックの相性は最悪である。
フレデリックは、なにもしていないじゃないか。
フレデリックは、はたらいてないじゃないか。
なんでみんなおこらないの。
この本の感想を調べると、怒り出す子、不満を訴える子が一定数いるのだ。
親の側も、説明不足で理解に苦しむというコメントが少なくない。
まったく同感だ。
フレデリックはじつに怠け者だ。
世の中には、物質的充足と精神的充足がある。
絵も音楽も酒もギャンブルも色事も、まったく非生産的である。しかし、人は生命を維持するだけでは生きていけない。
「フレデリックは、ニコ生主だと思うんですよ」
先日、私は知人にそう言った。
「生主」と呼ばれる連中がいる。
彼らは、ニコニコ生放送を通して非生産的な娯楽を提供する存在であり、一部の生産的な人間たちは、彼らに依って生きている。
ポッドキャスターやユーチューバーは?と聞かれそうだが、あちらは仕事としている者もいたりで、割と生産的なので、やはりニコ生主が近い気がする。
フレデリックは怠け者だ。
でも彼は、非生産的なスキルを持つ者の存在価値を教えてくれる。
ここにいてもいいんだ、という気になる。
何もしないが何かをしている不思議なねずみ、フレデリックは、そんなこんなで、今日も私の部屋の壁で、穏やかに微笑んでいる。