さまようたましいは、まごまごしている。

考えすぎなうぇびんさんが文句ばかり言っているブログ

ファミコン版Wizのファンが「ウィザードリィ」ではなく「エルミナージュ」をやり込んでいる件

ウィザードリィ」シリーズは、ファミコン版〜ゲームボーイ版にはまったベタな世代である。ゲームボーイの外伝についてはアイテムコンプ・三部作通しての転生を二回達成している。

久しぶりにコンシューマー機でWizを遊びたいと思い、2000年以降の作品を探してみると、ろくな作品が出てこない。「BUSIN」は名作と言われているが、それ以外については「これは私が遊びたい作品ではない」という匂いがプンプンしている。
タイトルを逢えて挙げないが、ドワーフをイケメンのおっさんにしたうえに、キャラクターが固定になっている作品を「ウィザードリィ」としてリリースした会社は呼び出して説教したい。

いろいろ調べた結果選んだのは、スターフィッシュの「エルミナージュ ゴシック」というゲームだった。
版権に影響がないシステムのみをフォークした、いわゆる「Wizクローン」のひとつで、本家よりもファンの評価が高い。

そういえば、Wizでは最後にハマった「ウィザードリィ エンパイア」は、スターフィッシュの作品だった。

エルミナージュ ゴシック 3D リミックス ~ウルム・ザキールと闇の儀式~

エルミナージュ ゴシック ~ウルム・ザキールと闇の儀式~

今のところ30時間くらいだが、これが驚くほど「よくできている」のだ。
「まんま昔のWizだから」ではなく、ファミコン版で「こうだったらいいのにな」と感じていた要素を、きれいにフォローしているのだった。

多くのファンが考える「こうだったらいいのにな」は、だいたい以下の通りである。

  • 世界観は暗くて微グロがいい
  • 顔グラなしを選択したい
  • ソフトリセットがほしい
  • 総攻撃がほしい
  • コマンドリピートがほしい
  • 高速移動がほしい
  • キャラメイキングのステータス振り直しはボタン一発で
  • ちょっとキツいくらいのバランスがいい
  • クリア後もがっつり遊びたい
  • 育てまくっても、作戦がまずいと死ぬようにしてほしい
  • 下級職でも最後まで育てるメリットが欲しい
  • 世界観を壊さない程度の新要素が欲しい

エルミナージュ ゴシック」は上記の「高速移動」以外をすべて満たしている。意外なことに本家シリーズでも、「ソフトリセット」「総攻撃」「コマンドリピート」をすべて搭載している作品は少ないらしい。女神転生シリーズがファミコン版から総攻撃に対応していたというのに。

「ゴシック」がリリースされてから評価が上がったのは、過去の「エルミナージュ」3部作の世界観が、BGMを含め、かなり軽かったからのようだ。私もなんとなく食指が動かない。

スターフィッシュの作品の欠点は、たまにありえないバグがあることだという。スーパーファミコン版のWiz6を発売日に買って初期ロットバグを引き、返品交換で一ヶ月プレイがお預けになった自分はあまり気にしてない(返品にも応じないらしいが…)。

エルミナージュ」シリーズがWizファンに愛される本当の理由は、さらに斜め上なところにある。

  • キャラグラフィック・BGMを自前のPNG画像に変えられる
  • すべての呪文の名称を変えられる

つまり「自己責任の範囲内であればWizardry、もしくは別のゲームを再現できる」のである。
RPGツクールかよ!と突っ込んでしまう。

実際、「エルミナージュ」で検索すると、キャラグラフィックがアニメキャラになっているスクリーンショットがザクザク出てくるwこんなWizは嫌だwww


ひとつ悟ったことがある。

Wizardryのファンは、「ウィザードリィ 遊びたい」わけではないのだ。
ウィザードリィ 遊びたい」のだ。

ウィザードリィ ルネサンス」プロジェクトは、その辺を大きく履き違えている。だから本家は微妙なのだ。

Wizardry Renaissance

最初にエルミナージュシリーズを立ち上げた、小宮山大介氏は、その辺がわかっていたのだろうか。

冒険者の皆様へ | Elminage ~闇の巫女と神々の指輪~

残念ながら小宮山氏が会社を辞めてしまっているそうなので、今後続編が出るかはわからないが、エルミナージュ4作品で数年は遊べそうなのは間違いのないところだ。

ソウスケくんは、なぜ彼女の父に結婚を反対されたのか。


7,000km離れた父の想い Father's heart from 7,000km away|ゴールドコーストウエディング(Gold Coast Wedding)

新婦の涙の理由とは?頑固な父が結婚式の日にとった思いがけない行動。

いや、いい話だよ。いい話だけどなんか違う。
最近そういうCMが多い。タイの保険会社にインスパイアされすぎ。

お父さんがここまでして式に来なかった理由を、全力で考えてしまう。

「昔気質なお父さん」「彼じゃダメなの!?」「私たち早すぎたのかな…」から推測してみよう。

1. ソウスケくんが生涯海外勤務が確定しているから

第一候補。長年家族と離れて海外勤務だったので、日本人が海外で働く苦労を知っており、娘にその苦労を負わせたくない、という心情。
世界中を飛び回る仕事や、国境なき医師団など、危険を伴う仕事かもしれない。

2. ソウスケくんの仕事に不確定要素が多いから

第二候補。見た感じ、彼女よりソウスケくんの方が若い。もしかすると、今はやりの学生起業家なのであるまいか。どんなにすごい人格者・イノベーターだったとしても、昔気質の団塊世代にOKをもらうのは難しいだろう。
「私たち早すぎたのかな…」が最もしっくりくる。

3. 夫婦別姓、在日外国人等

昔気質となるとこの辺で反対が出るかもしれないが、この可能性は薄いと思いたいところだ。

4. ソウスケくんに何らかの障害がある

彼女もかなり聡明そうだ。もしかすると彼女は女医で、ソウスケくんは何らかの病気か障害があるのかもしれない。


などと、単なるCMに理由付けを考えてしまった。

動画の後半、父は娘に内緒でソウスケくんの家を訪ねる。一戸建てのようだ。
これがソウスケくんの実家なのか、持ち家かはわからないが、持ち家であればやっぱり2.かもしれないな。

LGのWebOS2.0(笑)なスマートテレビでいろいろ遊んでみた

ここ一年くらい、ろくにテレビを観ていない。特にここ半年は、旧機のバックライトが暗いまま戻らなくなり、リモコンも壊れてしまったため、1分も観ていないのにNHK受信料を払うという、意味がわからない状態になっていた。

さすがに人としてどうかという気持ちになってきたので、思い切ってテレビを買うことにした。
当初はレグザで無難に済ませるつもりだったが、LGのスマートテレビに一目惚れ。

LGエレクトロニクス 43UF7710 [43V型地上・BS・CSデジタルハイビジョン4K対応 液晶テレビ]

「WebOS2.0」って何年前のトレンドだよ!と突っ込みたくなるが、UIとポインタ式のマジックリモコンの操作感が素晴らしい。

OSありきで選んだところ、40型+4Kという独り身の女には身に余る買い物になってしまった。
こうなったら使い倒すしかない。スマートテレビで何ができるのか、いろいろ試してみることにした。

テレビ

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テレビは三日で届いた。…でかい。半日かけて居間のユニットシェルフを組み直す。

最初に観た番組は「スーパープレゼンテーション」のカイラシュ・サティヤルティ氏の回。うわーうわー没入感すごい!サティヤルティ△!
自分がテレビをあまり観ないのは気が散りやすいからなので、このくらい視界が埋まるくらいがいいようだ。

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OS搭載+マジックリモコンのおかげで、初期設定はとても楽だった。ただし、マジックリモコンは文字入力には向かない。「WiFiのパスワードを入力中にポインタが外れた状態でクリックしてしまいキャンセル」というのを二回やってから、正規のリモコンに電池を入れた。

初期設定画面の各種アニメーションがとんでもなくかわいいのだが、設定を終えると二度と観ることができない。この「ネット接続に失敗」画面もものすごくレアである。ああかわいい。壁紙にしたい。

録画

翌日、外付けHDDが届く。自分の使い方なら2TBで充分だろう。友だちがAmazonでセール中なのを教えてくれたので安く購入できた。
いまどきのテレビなので、もちろんつなぐだけである。USB等のコネクタがすべて左側に集中しているので、部屋の角に置く予定の人は注意が必要と思う。

BUFFALO USB3.0 外付けハードディスク PC/家電対応 2TB HD-LC2.0U3/N [フラストレーションフリーパッケージ(FFP)]

番組表から選んで予約する操作は、他のテレビとの違いは特にない。
個別削除は簡単だが、観た番組と観ていない番組の区別がつかないのが悩ましい。他のテレビもこうなのだろうか。

追記:録画リストをよく見てみたら、サムネイルの左上に小さく「NEW」と書いてあった。わかりにくい。

番組をまとめて削除するUIも、あまり良くない。パソコンにつないで一括削除した方が早いかもしれない。

Mac接続

HDMIケーブルを買ってきて、MacBook Proをつないでみた。テレビのHDMI端子が固く、壊しそうな勢いで差し込まないと奥まで刺さらない。びびって差し切れておらず、30分ほど認識できなかった。
Macと比較するとかなり白がきれいに出ているのに対し、コントラストが弱いのがわかったので調整。

Maroon 5の「V」を再生。アダムの変な声は最高だ。サラウンドをオンにするとちょっとしたオーディオ機器並みの臨場感が出る。他の人の商品レビューによるといまいち音が軽いようだが、こだわりがないなら充分だと思う。

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40型の大画面でコーディングという野望もあったが、これは失敗。近視と乱視、この頃は老眼も出てきたのか、2m離れるとどんなに文字を大きくしてもコードがくっきり見えなかった。テレビのカラー設定もコーディングには合わない。

YouTube

LGのスマートテレビには、YouTubeTSUTAYA TV・NETFLIX・ひかりTVなどのストリーミングサービスが含まれている。「iPhoneの画面を表示できないApple TV」と考えてもいいかもしれないが、アプリの数はApple TVには大きく劣る。

追記:LG Content Storeでいろいろなアプリを追加することができる。

YouTubeにログインして、90年代初期の動画投稿番組「えびぞり巨匠天国」の傑作ストップモーションアニメ「PULSAR」を久しぶりに観る。監督の保田克史はその後、プチプチアニメ「ロボットパルタ」を手がけることになる。
さすがに大画面で観ると映像は最悪。古い動画はスマホで観た方が良さそうだ。

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PULSAR (1990) - YouTube

続いて「ピッチ・パーフェクト」の挿入歌、「Cups (When I'm Gone)」のPVを観る。これだけ新しい映像だと、画質・音質とも充分。いずれ4K動画も増えてくるかもしれない。

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マジックリモコンの音声認識を使うとかなり快適。ブラウザかYouTubeのコンテンツを呼び出すことができる。

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それに対し、視聴以外の操作(いいね!やリスト投入)はそれほどでもない。TSUTAYA TVもざっと見てみたが、こちらには数字キーのショートカットがあるため、マジックリモコンより旧来のリモコンの方が使いやすかった。

DVD

万能に見えるスマートテレビだが、DVDプレイヤーはない。
ドライブ→MacBook Pro→テレビと接続するとDVDが観られることがわかったので、「セロ弾きのゴーシュ」を観る。

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宮沢賢治の世界感を再現した、高畑勲の1981年の名作である。たぬきの子とねずみの子がくっそかわいい。

MacBookを通して見るよりも没入感が大きいが、操作はMac側からでないとできないので特典映像を見るのが煩わしい。やはり中古でいいからプレイヤーを買った方がいいかもしれない。

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ブラウザ

最後にブラウザを試した。WebOS2.0はChromeを採用している。はっきり言ってテレビには必要ないと思うが。

UAを表示してみたところ、Chromeのバージョンは「34.0」だった。現時点の最新は「46.0」なので発売時点のバージョンと思われる。バージョンアップはできるのだろうか。やる人がいるかどうかわからないが、「SmartTV」で判別させるとスマートテレビのみの処理をすることができる。

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Chrome搭載+4KだけあってCSS3の不具合などは見られないが、初期設定の拡大率だと画面が小さすぎる。150〜200%でちょうどいい。
広告の読み込み前にスクロールすると固まるので、閲覧は正直快適ではなかった。無理して利用するものではない。

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まとめ

結論としては、LGのスマートテレビはかなり楽しい。今後発売されるApple TVの内容にもよるだろうが、使っているスマホAndroidなら連携も可能なので、こっちを買うことを強く勧める。マジックリモコンもリボンメニューのUIも快適で、画面切り替えの際も、もたつきはまったくない。

ただ、マジックリモコンにも欠点は多い。手を細かく振ってポインタを動かすので、YouTubeなどで操作が多いときには手首が痛くなる。腱鞘炎に悩んでいる人や、お年寄りは利用しない方が良い。できるだけ十字キーか音声入力にする癖をつけた方が良さそうだ。


90年代前半、「企業戦士YAMAZAKI」という漫画があった。派遣社員山崎拓郎が、さまざまな新商品を提案して危機に瀕した企業を救うという設定である。
体調をチェックできる時計、紙製缶コーヒー、冷凍野菜ペーストなど、実際に商品化されているものも多い。
「一週間分の番組を自動録画するテレビ」も登場しており、連載時はHDDを小さくすることに苦戦していたが、現在は3チャンネルくらいまでなら実現できる。

ここ15年ほど「録画」をほとんどしていなかった。必要性を感じなかったからだが、HDDをつないでからいきなりテレビ生活が充実した。
毎晩、ごはんをもぐもぐしながら「0655」「2355」をまとめて観る。気になっていた番組をチェックする。放映時間に生活を無理に合わせなくても、好きな番組が好きなときに観られる。楽しい。

「いつでも見たい番組を選べることで、テレビは再び魔法の箱になる」という山崎のセリフを思い出す。

Apple MusicをやめてTSUTAYA Discasにした理由

「音楽に詳しくない自分に向いている」と、けっこう気に入って利用していたApple Musicだが、試用期間の3ヶ月で解約することにした。

http://holykurka.hateblo.jp/entry/2015/07/05/140525

Apple Musicというシステム自体は良かった。3ヶ月いろいろな洋楽に触れて楽しんだ。でも、本来の「自由に音楽を聴く」という機能に支障が出るようになってしまった。

iCloudミュージックがうざい

Apple Musicを有効にすると、iCloudミュージックが有効になり、プレイリストをデバイス間で同期するようになる。

iCloudミュージックは、スマホでしばらく聴いていない曲があると雲の上に送り、ストリーミングで聴ける状態にするのだが、私の場合「特定のアーティストの曲だけ全シャッフル」というのをよくするので、これはとても困る。

ストリーミング再生できるのになぜ困るのだ、と言われそうだが、私の場合、外で仕事をしているときや、ドライブで高速移動をしているときにこの聴き方をすることが多いので、オフラインで聴きたいのだ。

ただでさえ仕事でテザリングを利用するのに、ストリーミングごときに貴重な通信量を消費したくない。iPhoneの容量なんかどうでもいい。

なお、完全にオフラインで聴くには、一曲ずつ(アルバム単位ではうまくいかなかった)メニューを出して「オフライン再生」を設定しなければならない。

先日も北海道へ帰省中、札樽自動車道スキマスイッチでも聴くか、とiTunesを起動したらこの有様である。

オフライン再生に設定していたのが3曲だけだったので、高速にいる間じゅう、その3曲だけ再生され続け、手が離せず止めることもできないという無間地獄に陥ってしまった。

で、試しにiCloudミュージックを停止するとこうなる。Apple MusicはiCloud必須なのである。

曲の偏りが激しい

Appleと提携していないレーベルは出てこないので、やっぱり偏りは強かった。2ヶ月も経つと、前に見たプレイリストが頻発するようになった。私、キリンジ安藤裕子苦手なんだってば。

洋楽はわりと満遍なく配信されており、邦楽でも、レンタルでは聴くことができないモンゴル800があるのはなんだかうれしい。
しかし、秦基博山崎まさよし元ちとせなどが所属しているオフィスオーガスタのレーベルがあまりないようで、残念な感じだった(元ちとせがメジャーデビューする前の島唄はたっぷり聴くことができたが)。

CD3枚分楽しめるか?

という感じで、金銭的なバランス、本来の使い勝手が悪くなったことを考えると、980円=CD3枚分には届かないという結論となった。

とりあえず、これまで入手した曲を再度ライブラリに入れるため、TSUTAYAへ行くことにした。

店レンタル地獄とネットレンタル

久しぶりのTSUTAYAはさっぱりわからなかった。
ウルフルズはどこにあるのか。ア、イ、ウ…ってここ洋楽の棚やん!邦楽…あれはポップなのロックなのパンクなの!?ロックか?苦労して棚を見付けても貸し出し中だし!

借りるのを諦めてTwitterでぼやいていたら、友人らが「ネットレンタルはどうか」と勧めてくれた。

定額制のTSUTAYA Discasと、都度払いのぽすれんがあるらしい。スマホで申し込んでおくと勝手に届いて、ポストに投函すれば返せるらしい。
数年ほどレンタルをしていなかったので、全く知らなかった。世の中便利になったのう。

検討した結果、TSUTAYA Discasを試してみることにした。RSRで聴いたかなりマニアックなアーティストも揃えていたことや、在庫が充分にあり、貸し出し中が少ないのが理由。
Tポイントも貯まるし、管理画面のUIも悪くない。

お試し期間なので新作の「インターステラー」など借りてみた。第一弾が届くのが楽しみだ。


結論として思ったのは、やっぱり私はLife is Musicな人ではないなあ…ということ。
洋楽やジャズの有名アーティストの名前を覚えられただけでも収穫だったかな。

とにかく、オフラインで好きな曲を聴けないのは御免こうむりたい。
もちろん、母のiPhoneiCloudミュージックをオフにしておいた。

よしなしごと - 20150829

レオ・レオニの「フレデリック」は、ねずみ界のニコ生主である

自宅の居間に「フレデリック」のポスターを飾っている。
レオ・レオニが生み出した、変わり者のねずみ。

フレデリック―ちょっとかわったのねずみのはなし

フレデリック―ちょっとかわったのねずみのはなし

レオ・レオニとの最初の出会いは、ほとんどの人が小学二年生の教科書の「アレクサンダとぜんまいねずみ」か、本屋の絵本コーナーの定番「スイミー」だろう。

齢8歳の無垢な子どもたちが、美しい色彩とかわいいねずみに心惹かれ、同じような装丁の「フレデリック」をほしがる。
が、こいつはとんでもない地雷図書である。
内容の解釈が大人でも困難で、賛否が大きく分かれる作品なのである。

フレデリックは、働かない。

冬ごもりに備えて、仲間のねずみたちが夏秋と食糧集めに勤しむ中、こいつは徹底して働かない。
ただ虚空を見上げ「季節を集めているんだ」と言うばかり。

その意味は冬ごもりの終盤で明らかになる。食糧が少なくなり、荒んだ仲間たちの心に、フレデリックは集めていた「春」を再現してみせるのだった。

物語はそこで終わっている。

小学生には二種類いる。
素直で阿呆で「子どもらしい」子と、聞きたがり屋で賢くて「大人びた」子である。
後者の子と、フレデリックの相性は最悪である。

フレデリックは、なにもしていないじゃないか。
フレデリックは、はたらいてないじゃないか。
なんでみんなおこらないの。

この本の感想を調べると、怒り出す子、不満を訴える子が一定数いるのだ。
親の側も、説明不足で理解に苦しむというコメントが少なくない。

まったく同感だ。
フレデリックはじつに怠け者だ。


世の中には、物質的充足と精神的充足がある。
絵も音楽も酒もギャンブルも色事も、まったく非生産的である。しかし、人は生命を維持するだけでは生きていけない。

「フレデリックは、ニコ生主だと思うんですよ」
先日、私は知人にそう言った。

「生主」と呼ばれる連中がいる。
彼らは、ニコニコ生放送を通して非生産的な娯楽を提供する存在であり、一部の生産的な人間たちは、彼らに依って生きている。

ポッドキャスターやユーチューバーは?と聞かれそうだが、あちらは仕事としている者もいたりで、割と生産的なので、やはりニコ生主が近い気がする。

フレデリックは怠け者だ。
でも彼は、非生産的なスキルを持つ者の存在価値を教えてくれる。
ここにいてもいいんだ、という気になる。

何もしないが何かをしている不思議なねずみ、フレデリックは、そんなこんなで、今日も私の部屋の壁で、穏やかに微笑んでいる。

おうちにはじめてGが出た。

深夜、背後でかさかさかさかさと聞きなれない音がしたので、振り返ったら茶色くて楕円形のコオロギみたいな虫がいた。
家のどこかにある、虫専用入り口から入ってきたようだ。
こちらに越してきてから屋外で見たことはあったが、自宅でははじめて見た。

弱っているようなのでビニール袋を被せようとしたが、気持ち悪いくらい早くて捕らえられない。
台所に逃げ込む。我が家で増えるとか勘弁してほしい。
必死で探す。

ガムテープが目に止まる。ガムテープを30cmくらいに切って、Gの上からぺたっとかぶせる。
そのまま包んでやろうとしたら、かさかさかさかさと凄まじい勢いでもがいて再び逃げ出した。ガムテープの粘着力から逃れるとか信じられない。まじでG気持ち悪い。

ガムテープを被せる→もがいて逃げられるのループを3回ほど繰り返す。

気付くとGは玄関のドアの前にいるではないか。
ドアを開け、ビニール袋で払い出し、すばやくドアを閉じる。

40歳にしてはじめてのGとの戦いは不戦勝で終わった。
明日は9時に家を出なければならない。
開けたときに戻ってきたらどうしよう。いっしょに車に乗り込んできたらどうしよう。

手を洗っても、からだじゅうがむずむずする。 Gがいない故郷に逃げたくなる、深夜4時。